~腹腔鏡下手術と開腹手術 ~

以下の内容は単なる患者が書いているものであり、医学的エビデンスをもったものではありません。一つの体験記事として参考にしてください。

炎症性腸疾患と胆石症の関係

 私はずいぶん以前(15年ほど前)から胆石症でした。持病がクローン病なので、同じ疾患をお持ちの方はよくご存じですが、胆石症は頻度の高い合併症と言われています(※)。
※ 参考文献:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcoloproctology1967/59/7/59_7_378/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcoloproctology1967/43/6/43_6_1154/_pdf

胆のう摘出までの経過

 私の場合は、過去に2回の開腹手術を経験しており、癒着が結構あることから、以前から腹腔鏡下手術は難しいだろうという指摘も受けていました。いままで、胆石症については、経過観察をしていただけです。
 ただ、3年前ほどに、総胆管に石がつまり、ERCP( 内視鏡的逆行性胆管膵管造影)で、石を除去してもらってから、どこかのタイミングで胆嚢の切除をしないといけないと思っていました。総胆管結石の処置してもらったドクターからは、「MRIの画像を見る限り、腹腔鏡下手術のチャレンジもありかもね」と言われていました。
 総胆管結石で、痛かったときは、「いつかは」と思ってましたが、痛みがとれしまうと手術を考えるのは先送りしていました。

 そして、世界はコロナ禍に突入してしまいました。以前は、毎月、都市部の病院に通院していましたが、リモート診察に切り替わってしまいました。

 今年(2021年)に入ってから、体調は普段と変わらずで、在宅勤務(いわゆるテレワーク)が増えました。
 8月に入り、足がだるい日が結構あるなぁと感じていましたが、暑い日が続いたのと、在宅勤務による運動不足だろうと思っていました。そして、9月に入って微熱が時々でるようになりました。「怪しい、コロナかも」と思い37.5度の発熱が続いた9月4日に、県のLINEの新型コロナ対策パーソナルサポートに病状登録をしました。土日が続いてので、その間、対処療法的に市販の風邪薬を服用しました。月曜日なると37.5度を超える熱はでなくなってました。ただ、とにかく足がだるかったです。
 その週の週末に近隣のよく知っている開業医(クリニック)の先生に電話で相談したところ、PCR検査を含めて、診察しますということで、来院しました。
 PCR検査の結果は、陰性でした。まずは一安心。ただ、血液検査から炎症反応がいつもより高い数値で、どこかでクローンが再燃しているではと疑われました。炎症を抑えるということで、抗生剤の点滴を開始しました。エコーとCTの検査を受けた結果は、急性胆のう炎が熱の原因として一番怪しいというものでした。胆のうには20個以上の結石があり、胆のう自体が大きくなっており、半分は機能していない状況と思われるということでした。
 先生から、普段通っている先生(主治医)に、診察および摘出手術の相談をした方がよいというご提案をいただき、早速、主治医に連絡しました。主治医の回答は、コロナ対応で一部手術の受け入れ制限をしているというのと私自身がまだ、ワクチンを打っていなかたので、開業医の先生の診断からすると、コロナが蔓延していない地元の病院ですぐに外科治療も含めて診察をしてもらった方がベターというものでした。
 そこで、地元、総合病院である公立豊岡病院に紹介状を書いてもらい、早速、消化内科で胃カメラ、大腸ファイバーの検査を受けました。検査結果は、胃と大腸はきわめて綺麗ということで、クローンの再燃が否定されました。続いて、CTとMRIの検査を受けました。やはり、急性胆のう炎が一番怪しいといことになりました。
 そして、外科の先生の診察を受けて、胆のう摘出手術を受けることを決断しました。外科の先生によるとCT、MRIからすると最初は腹腔鏡下手術をトライし、ダメなら開腹移行してもよいかもしれないという話でした。

腹腔鏡下手術か開腹手術か

いよいよ「長年育てた胆石」の摘出かと思いつつ、自分なりに、ネット情報などを検索しました。
 ちょっと古い論文(学会誌の記事)ですが、日本腹部救急医学会の2009年の鈴木らの下記の内容などに目を通していました。

特集:「急性胆管炎・胆嚢炎 急性膵炎の診療ガイドライン」制定後の診療をめぐって
急性胆嚢炎に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術
~開腹移行ゼロ,合併症ゼロをめざして~
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaem/29/3/29_3_477/_pdf/-char/ja

 手術を受けるにあたって、私の場合、2回の開腹手術を受けているための癒着の他に、一つの弱点があります。ヨードアレルギーがあり、造影剤を使ったCT、MRIの検査が受けられないことです。上記の論文では、 早期手術での腹腔鏡下手術の有用性などが記載されていますが、症例の多くで、術前の胆道系の造影検査を実施していることもわかります。全くの素人で私が書くことではないですが、やはり、術前にかなり確度の高い検査が実施されていることが前提になっているように感じます。

 さて、今回の私のケースです。入院して、執刀していただく先生から診断および術式の説明を受けました。この病院には、3年前に腸閉塞で入院したときの画像データが残っており、今回のものとを比較しながら説明を受けました。素人の私がみても、胆石が胆のう内に満たすぐらいあるのがわかるのと、一つの大きな胆石は総胆管を胆のう側から押しているようにみえました。さらに前回のものと違い一部の画像で、肝臓との境目がはっきりしない画像もありました。
 先生からは、造影剤を使った検査をすれば、どうなっているかある程度わかるが、単純CT、MRIの画像では、胆のうと肝臓がどうなっているかとか総胆管と胆のうが癒着しているのか一体化しているのかはわからないということでした。また、限りなく可能性は低いですがという前置きがありましたが、胆のう癌となっており、肝臓側に広がっていることも画像からは否定できないという話しでした。その場合は、リンパ節に及ぶ手術となるという説明を受けました。ようは「開けてみないとわからない」というドラマでもよく聞く、話しでした。
 ここまで、読んでいただいた方は、推測がつくと思いますが、私の場合は、最初から開腹手術をという選択となりました。

 結果は、想定された中ではベストなものでした。胆のうは、大きくないっていたようですが、肝臓とはくっついていなかったとのことでした。ただ、肝臓に化膿したところがありそれを取り除くのに出血が結構あったようですが、綺麗に取り除け、総胆管にもダメージはなかったようです。手術時間は約4時間でした。16cmの開腹の傷口あとの痛みが残ってましたが、術後8日で退院できました。

一患者の思い

 私たち患者は、手術といわれると、まず、メンタル的にダメージを受けます。そして、受けると決まったらより楽な術式がないのか今、受けるのがベストなのかとかどの病院で受けるのがよいのかと色々考えます。
 今回はコロナ禍ということもあり、通常とは状況も違います。いずれにしても先生(医師)方とどのようにコミュニケーションをとるか、また、患者会をはじめとする経験者のピアサポートなども有効に活用した方がよいと思いました。
 手術を受ける患者が納得して受けることが一番大切なことだと思いました。

以上の内容は単なる患者が書いているものであり、医学的エビデンスをもったものではありません。一つの体験記事として参考にしてください。